今ちゃんが、わたしの前には3人もいたのに、ピッチにはひとりもいなかった。
試合開始とともに買ったビールの半分も飲まないうちに、10人になっていた。
赤点、赤字、赤札、赤紙、赤はマイナス、赤は緊急、赤は不名誉、赤は不吉。
そんなものは今ちゃんにはまったくもって似合わない。
ちょっとびっくりして、叱られたネコのようにサーッと今ちゃんは消えていった。
わたしたちはぽかんとしていた。
今日の主役の座をはにゅーから奪ったのは、佐原。
サラサラの佐原はその日、ピッチ上で起きた重大なことのほとんど全てに頭を突っ込んで、その絶大な効果に喜んだりがっかりしたりしていた。
わたしたちは若干置いてきぼりにされかかり、呆れそうになりながら魅了された。
日々進歩を遂げる平山は生き生きと動き回り、今後の伸び代を期待させた。
わたしたちは本当には彼を評価していなかったし、彼がまだ途上にある選手で鍛えられなければいけないということにようやくにして気づいた。
〇ソリマチはその灰色の脳細胞を無意味な皮肉を言うために使うのではなく、類まれなFWをいかにして目覚めさせるかに使うべきだった。
あんな厳しい状況で、滑って笑いが取れるのだ。並みの才能ではない。
エメルソンは顔色ひとつ変えず、普段にも増して神出鬼没だった。それに比べると梶山は決して悪くは無かった、良い出来だったと言えるが、1人少ない状況では自分自身にもっと負荷をかけても良かった。(期待が大きいのでね)
1人少ない状況が大好きな藤山は虎視眈々とボールを狙っていた。
そして、わたしは久しぶりの実戦で一人少ない状況でくたくたになり、よろよろと明大前に降り立った。