書類にサインした手が一つの都市を滅ぼした
五本の君主の指が呼吸に税をかけ、
死者の地球を二倍にし、一つの国を半分にした
この五人の王たちは一人の王を殺した。
その強力な手は撫で肩となり、
指の間接がチョークをもつと痙攣をおこす
話し合いを終わらせた一本の鵞ペンは、
殺戮を終わらせた。
条約にサインした手が熱病をはびこらせ、
飢餓がひろがり、害虫が飛来した
名前をなぐり書きしただけで人間を支配する
その手たるや、すごいものだ。
五人の王が死者の数を数えているが、
かさぶたの傷をやわらげず、額を撫でることもない
一つの手が天を支配するように一つの手は憐れみを支配する
手は流すべき涙をもっていないのだ。
ディラン・トマス 「書類にサインした手」 松田幸雄訳
わたしらは王にはなれない
王らによって殺戮される側の人間であるという決意をもって一歩踏み出したい