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8.6 ヒロシマ

新宿・紀伊国屋ホールで8月6日から20日まで「紙屋町さくらホテル」が上演される。
昭和20年原爆投下直前の広島に移動演劇隊「さくら隊」がやってくる。

名優丸山定夫と宝塚出身の大スター、園井恵子を擁するさくら隊9人の運命は江津萩枝のルポルタージュ『櫻隊全滅』に詳しい。新藤兼人監督が「さくら隊散る」という映画にもしている。

この芝居の作者である井上ひさしさんはその悲惨な事実を悲惨なまま伝えるのではない。丸山定夫と園井恵子は残し、そこに旅館の女主人、特高の刑事、大学教授、天皇の密使、陸軍中将などの素人を加え、芝居を作り上げようとする。
芝居というものに全てを捧げていた丸山と園井、二人と共に舞台を作り上げる過程で芝居の本質に触れていく素人の彼ら。
“芝居は何をできるか“を井上さんが真摯に問うた答えになっている。

「わたしたちが今生きている時代で一番重要な問題は何か、それはよく見えない。でも歴史になると見える。それを同時代のうちに、これじゃないかと問いかけるのが小説であり、音楽であり、映画であり、芝居だと思っています。」井上さんの言葉だ。

大江健三郎さんの小説もそういうものであると思う。
同い年の井上さんと大江さんはお互いを理解しあう関係だ。
大江さんは、この「紙屋町さくらホテル」に対してこう言っている。
「舞台の一つ奥の明るい食堂みたいなところに、原爆で死んでしまった人たちが宝塚の歌を歌ったりして、夢のような懐かしい時間を過ごしている。それが芝居を見ていて一番濃密な時間として、目の前に迫ってくる。そうした終わり方がありました。こういうところにも、井上さんと僕は同じものを捜し求めているという気持を持っています。」

今回の演出ではどうだろう。
「紙屋町さくらホテル」
by inadafctokyo | 2006-08-05 11:47 | 大江健三郎


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