もう一度 de nouveau 大江光

c0068891_23322914.jpg大江光さんが7年ぶりに新作を編んだCDを出される。
毎日新聞で梅津時比古さんが大江親子に取材して、上下の記事にしてくれた。
7年間光さんは「作曲をするかわりに音楽を調べるようになった。きちんと基本から習うことで自分の曲の欠点がわかり、言葉で自分の音楽を説明できるようになった。」と父は語るが、一方で
「知的に成長したが、驚きがなくなっていく」「音楽そのものの光がいなくなっていく」と残念がる。
しかし、「家内が書き溜めていた光の初めの頃のメロディーを、光が新たに音楽に仕上げていった」そして、その曲ができあがった時、「光が帰ってきた、と感じた」

そのことは大江健三郎さんにとって大切な作品で、繰り返し語られてきた「ニルスの不思議な旅」を思い出させる。
 ニルスは妖精に小さな姿に変えられ、ガンと一緒に旅をする、その旅の最後に故郷に戻り、『お父さん、お母さん、帰ってきました』と言うが大江さんは何か違うと感じていた。
「フランスで翻訳を読んだとき『わたしはもう一度人間になりました』となっていた。」
光さんがもう一度作曲に帰ってきた、しかも新しくなっている。
その発見は大江さんが最後の小説「さようなら、私の本よ!」を書いていく上で、勇気を与えるものになったろう。
「今度の小説では正面から、僕の中に音楽が入ってきて、書いている自分を方向づけるという印象があった。」
大江さんは執筆中ベートーベンの後期の弦楽四重奏を聴き続けていたという。
サイードはその音楽について「大きな矛盾がはっきりと現れ、その矛盾の二つの柱が光を発しあって、解決よりは破滅に向かって芸術作品が走っていくように終わる。」と評した。

最後の小説はどれほど美しい作品になるだろう。
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by inadafctokyo | 2005-05-20 00:05 | 大江健三郎


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