瀬川康男さんが亡くなられた。日本の保育園に瀬川さんの絵本がないところはないと思う。そして小さいお子さんを育てたことのある親御さんで瀬川さんの絵本にお世話にならなかった人もいないだろう。
松谷みよ子さんとのコンビで産み出した赤ちゃん向けの絵本
いない いない ばあ
もう ねんね
いい おかお
あなたは だあれ
瀬川さんの描くネコやくまのぬいぐるみは大きな目でしっかりと赤ちゃんを見つめる。
松谷みよ子さんはやさしいことばで語りかける。
文字の読めない小さい人、まだ赤ん坊という時期に絵本を与えるという考えが充分に浸透していなかった時代に、圧倒的に支持されたのがこの赤ちゃんの絵本シリーズだった。
どこの保育園でもページがばらばらになりそうなほど繰り返し繰り返し保育者がこどもたちに読み聞かせた。
わたしは今でも覚えている、赤ちゃんの目を見張った笑顔、驚くような口の動き、発せられる歓声。
これらの絵本が初めて世に出てから既に40年以上が経ち、「いない いない ばあ」だけでも400万部が発行された。
瀬川さんは若い頃に大病をして、生きることの難しさも代えがたさもよく実感していらした。日本昔話に見られるような美しい色彩、自在で生き生きした線、常に大らかなユーモアが大人もこどもの心も捉えた。一方絵本平家物語のように深いところに響くような絵も発表した。
これからも小さい人たちにずっと長く愛され続けるでしょう。
ご冥福をお祈りします。