冷たい雨が降り続く中で、わずかに雨が凌げる狭いコンコースには人が溢れかえっている。みな青と赤のポンチョやビニール合羽を羽織っている。
その光景は派遣村とも難民キャンプとも似ているものだっただろう。
暖かいトン汁は着いたときにはもう売り切れだった。相変わらず、アウェイサポーターに対するホスピタリティなんてものは必要ないという見事な割り切り。
売店の若い女性は「アイスクリームいかがですか?」と声を張り上げている。それが延々と続くので、暖かい飲み物を買いに行ったときに、「アイスクリームなんて聞くだけで寒いからやめて」と言ってしまう。
北朝鮮の次に見事なコレオグラフィを作れる人たちを眺めながら、少し肩透かしに似た感じを覚える。
もう何年も代表戦以外では足を踏み入れなかったさいスタ。
以前より、毒や灰汁が薄まっていると感じる。
そして納得する。東京のゴール裏だってそうなのだ。
Jリーグが開幕して16年、野生を失い大人になって当然だ。それを洗練というかどうかはわからない。
後からやってきた東京は大人げなさで他のクラブのサポーターと一線を画していた。
それも今は昔ということだろうか。
とにかく、さいスタを毛嫌いしていた過去に決別をして、これからはその時々に判断して行ったり行かなかったりするだろう。