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2008 ヒロシマ

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ロシアの作家ストルガツキー兄弟の「道ばたのピクニック」はタルコフスキーの映画「ストーカー」の原作として有名だ。

どこかの惑星から生物が地球にやってくる。彼らは高度に発達した文明をもっており、地球を去る際に彼らの星の生産物を捨てていく。地球人がピクニックに行ってゴミを置き去りにするように。その高度に発達した、人間にとって未知の物体が思わぬ利益をもたらすとともに、大変な危機もまた、見過ごしに出来ない副産物として私たちに重くのしかかる。

兄弟には1954年のビキニ環礁で水爆実験によって被爆した日本人漁船乗組員のことを描いた「ビキニの灰」という作品もある。軍に勤務していた兄のアルカージィが日本、アメリカ、オーストラリアの情報を得て、被爆の実態にショックを受けて作品を書くことを決意したもの。
この後、1986年にはチェルノブイリの事故があり、大江健三郎との対談では「ビキニの灰」はナイーブでドライであったと述懐し、次のように発言している。
「もし、人類よりもっと高い文明を持っている宇宙人、異なる惑星の者たちが地球に来て、なにかプレゼントしてくれるとしても、私たちはおそらくそれをなにか悪いものに変えてしまうのじゃないかと思います。それが人間の文明の特質なのです。文明はものを、とくにそれが社会の共有のものであればかならず悪用してしまう。」

このような認識をもった彼らの最後の長編が「滅びの都」。実際に執筆されたのはチェルノブイリ以前だというが、単なる共産主義国家批判ではない問題を含んでいる。

ヒロシマ・ナガサキが最後の悲劇ではなく、むしろその効果を認識した人類によってその後も幾度も繰り返されることに対して、わたしたちは怒らなければならない。人間としての誇りをもって。
by inadafctokyo | 2008-08-06 16:02


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