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全身運動としての読書

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「読む人間 大江健三郎 読書講義」
“ 本を再読する、読み直すことは、全身運動になる。”大江さんがこの講義で掲げた標語だ。標語としては出来がいいとは言えないが、大江さんが長年続けてきた読書の流儀であり、その作品にも影響が色濃く現れている。
ひとつの作品を何度も読み直す、方向を定めて探求する。最初に読んだ時はただ闇雲に森を歩くようだったものが、2度目、3度目には樹木の一つ一つが目に入り、風に起こる葉擦れの音、鳥の声に気付く。そのような読書を私が知らず知らず習慣にしたのは、大江さんの影響だろうか。

翻訳の本の場合を例にとって大江さんは全身運動としての読書を案内している。
翻訳の本を読んで、本当にいいと思うところ、またよくわからないところがあったら、原書にあたる。辞書を辛抱強く引きながら。そうして一冊の本と一人の作家と向き合う。
そのような大人向けの読書に相応しいものとして、エドワード・サイードの著書をあげているが、私にはとても歯が立たないことは明白だ。このレベルの英語が無理だ。

うんと若い人のために「トムは真夜中の庭で」という少年少女小説を薦めている。これなら読んだことがあるし、英語の文章を見ただけでイヤになることもないのではないか。
何より、今の私にはそうした読書での全身運動が必要とされている。ある種の危機を乗り越えるために。

それにしても荻窪のドトールはタバコの匂いが充満している。入り口そばの禁煙席に何の意味もない。
by inadafctokyo | 2007-09-13 20:58 | 大江健三郎


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