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Kバレエカンパニー「ロミオとジュリエット」

6月2日Bunkamuraオーチャードホール

熊川哲也を初めて知ったのは1989年、日本人初の金賞を受賞したローザンヌ国際バレエコンクールでだった。そのとき17歳、それ以来伸び伸びした跳躍、切れの良い回転を活かした表情豊かな踊りに魅了され、ずっと注目してきた。
いうなればバレエにおける梶山陽平のようなもの。(この件に関するバレエ界からの苦情は一切受け付けない)
今のところ高校生の頃から秀でた能力を見せ、注目していたところが同じだというだけで、うちの10番の方はまだこれからだ。
サッカー選手も足の故障は付き物だが、熊川哲也も2007年右膝前十字靭帯断裂、2008年右膝半月版損傷という大怪我を乗り越え、今回はコンディションが非常に良いと聞き、頑張ってチケットを手に入れた。

熊川哲也のロミオ、ロベルタ・マルケスのジュリエット。
育ちが良くて友情に厚いロミオ、清純ではつらつとしてかわいいジュリエット、この二人が出会ってあっという間に恋に落ち、結ばれるが行き違いから悲劇に至る。誰もが知る物語を冗長な部分は廃して、テンポ良く展開する。
舞踏会の場面も重厚な音楽に沿った厳かな振り付けが一般的だが、30代以上のダンサーが充実しているロイヤルと違って、若いダンサーが主体のKバレエでは若さを活かした振り付けとなった。
階段を多用したヨランダ・ソナベンドの舞台美術とあいまって、広場の場面も含めてスピーディーで小気味良い印象の舞台だ。
プロコフィエフの音楽は人物の感情や情景を非常によく表し、美しい。
幕開けのマンドリンの奏でるメロディ、ジュリエットのテーマ、舞踏会の重々しい調べ、そして美しいパ・ド・ドゥ!
バルコニーのパ・ド・ドゥでの弾けるような恋の喜び、寝室のパ・ド・ドゥでは激しい感情と悲しみを二人は見事なパートナーシップで表現した。
舞台を締めくくる墓所の場面の悲痛な踊りはそれまでのきらめくような生を表徴する数々の踊りがあったことによって更に印象深いものになる。

主な配役はマキューシオ:橋本直樹、ティボルト:遅沢佑介、バンヴォーリオ:伊坂文月、ロザライン:松岡梨絵、パリス:宮尾俊太郎!、キャピュレット卿:スチュアート・キャシディ、キャピュレット夫人:松根花子、乳母:前田真由子、僧ロレンス:ブレンデン・ブラトーリック、僧ジョン:小山憲
中世ヨーロッパの貴族社会というような設定は昔なら日本人のダンサーでは様にならない、カリカチュアのように感じられたこともあったが、それは遠い昔のこと。それぞれがその人物をよく生きて、娘たち、友人たちの群舞も溌剌として、現代人にも違和感のない14世紀イタリアの悲恋物語を再現した。

観客の大きな拍手によってカーテンは幾度も上げられた。
いつでも素晴らしい舞台は生きていく糧になるものだ。
by inadafctokyo | 2011-06-05 09:18


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