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第4回大江健三郎賞公開対談にて

講談社のホールで大江健三郎賞第4回を記念した恒例の受賞者と大江さんとの対談が行われました。
私は大江健三郎ファンクラブの仲間たちと参加しました。講談社の建物は昭和初期の趣のある建物です。仲間が早めに並んでいてくれたのですが、この日は関係者席に席を取ることに。

第4回の受賞作は中村文則さんの「掏摸」です。天才スリ師を描いた作品です。
中村文則さんは2005年に「土の中のこども」で芥川賞を受賞しています。早くから作家になることを志し、大学を卒業後フリーター生活をしながら作品を作り上げることに力を尽くしたということです。

対談と言いながら、その内容は大江さんがご自分の好きな作家を引き合いに出しながら、自分がこれまでの作品で書きたかったことや、中村さんの作品を解説するというもの。9割方は大江さんの講演になっていました。
いつもそんなことはないので、中村さんという方があまりお話されることが得意ではないのかもしれません。

また、この日はとてもご機嫌が良く、終始にこにこして時々足を伸ばしたり動かしたり、自由な感じが溢れている大江さんなのです。

好き勝手に話し続けて、あれ、これはどこに話が行ってしまうのかと心配していると、いつの間にか中村さんの小説に繋がってなるほどと思ったり、前置きながっと思ったり。

音声の調整がうまく行っていなくて、お二人とも話が聞き取りづらく途中眠くなってしまったりする中でも、面白そうと思ったところでは目が覚めるのです。

人間と動物の違いは理性と言葉。でもそれだけでは観念的になってしまう。手を使うことによって実際的になる。観念的にならないために手がどれだけ重要か。
「掏摸」は手をどのように使うかを描くだけで文学になっている。
また重要な役割でこどもが登場している。こどもは非常に大事なもの。

中村さんが「水死」について、これまでと文体が違う、静かな文体だったと指摘すると、大江さんは”最初からこの文体で書こうということは決めない。何度も書き直していく中でできていく。
三島由紀夫のように書き出しから最後が決まっているというようなことでは、楽しみがないでしょう。”と答えていました。

対談が終了後は関係者で打ち上げパーティが行われました。
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大江さんと中村さんに花束を贈呈してから、お話をして写真を撮らせていただきました。

最近の大江さんや光さんの体調について伺ったり、ファンクラブ通信の座談会で語られていたことについて楽しくお話をしました。語りつくせないほどだったのですが、いつまでも大江さんを独占しているわけにはいきません。適当にタイミングを見計らって失礼しました。

私たちがお送りした通信を大江さんとかおりさんが楽しんでくださったとわかって、次の通信を作るモチベーションになりました。


次の作品も用意されていると伺いました。お元気でまた新しい小説でわたしたちを楽しませてくださることを願っています。

中村さんについて大して触れられませんでした。「掏摸」についてはまた今度。(また今度と言ってもなかなか実現しませんよね・・・)
by inadafctokyo | 2010-05-17 22:18 | 大江健三郎


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